- B型肝炎
- C型肝炎
- 自己免疫性肝炎(Autoimmune Hepatitis:AIH)
- 原発性胆汁性胆管炎(Primary Biliary Cholangitis:PBC)
- 原発性硬化性胆管炎(Primary Sclerosing Cholangitis:PSC)
B型肝炎
B型肝炎ウィルスは、C型とは異なり、細胞の大切な核の部分までウィルスが侵入し住み込んでしまう為に、ウィルスを完全に排除できる治療は確立されておらず、活発なウィルスを活動しないように抑え込む、つまり"寝かしつける"治療が主軸です。
B型肝炎の診断方法・検査
B型肝炎ウィルス量や抗原・抗体の状態を把握する必要があり、採血検査で行います。(特殊項目は外部検査に委託しています。)肝臓の形態や肝臓内に病変がないかをみるのにエコー検査を行います。そして、肝硬変への移行や脂肪の沈着具合を評価するのにFibroScanで測定します。
B型肝炎の治療
活動性がみられる場合は、核酸アナログという薬で、通常は内服がスタートするとのみ続ける必要があります。治療の適応に関しては肝臓専門医の適切な判断に委ねられています。また、35歳未満の方は、インターフェロンの治療により肝機能の長期改善効果が望め、薬剤中止後も抗ウイルス効果が持続するため、インターフェロン治療が選択されるケースもあります。
一方で、B型肝炎に感染していても、肝障害がない状態(いわゆる"キャリア"の状態)においても、6か月から1年程度の間隔でB型肝炎ウィルスの活動度を採血や超音波、Fibroscanなどで経過フォローする必要があります。
抗がん剤治療や免疫抑制剤やステロイドの長期投与を行う場合に、眠っていたB型肝炎が突然目覚めて活動することがあります。再活性化といわれていますが、その予防のためには、こうした治療が始まった段階から3か月おきにB型肝炎の活動度をモニターし、活動がみられる場合は速やかに核酸アナログをスタートする必要があります。抗がん剤治療や免疫抑制剤、ステロイドを使用しているケースでは、是非一度ご相談ください。
C型肝炎
私の米ペンシルバニア大学消化器内科に留学中の研究テーマは、肝炎ウィルスの免疫学についてでした。近年、特にC型肝炎の治療は飛躍的に向上しています。副作用の多いインターフェロン注射から、副作用の少ない直接作用型抗ウィルス薬(Direct Acting Antivirals:DAA)が主流になり、最短2か月の内服でC型肝炎ウィルスの排除ができる時代になりました。(2021年春現在)
慢性肝炎から肝硬変になるのに約20年、肝硬変から肝がんが発症する可能性が約10年と言われていますが、DAA治療の最も大切なことは、C型肝炎ウィルスの排除もさることながら、将来的な肝がん予防し、肝硬変や肝不全への進行を阻止することが何よりも重要です。その観点から、治療の適応に関しては肝臓専門医の適切な判断に委ねられています。
C型肝炎診断方法・検査
健康診断で行うHCV抗体はスクリーニング検査となります。近年精度があがったせいか、ごく微量の抗体も陽性検出されます。抗体の交差反応などに陽性に出てしまったり、後は過去の急性感染で知らぬ間に治っているケースも20-30%あると言われています。HCV抗体陽性の場合は、HCV-RNAという核酸増幅法でウィルスを認めれば、HCV陽性と確定診断されます。エコーでの肝形態の評価やFiboScanでの線維化・脂肪化検査も当院では、同時に行います。
C型肝炎治療
直接作用型ウィルス薬(DAA)といわれる内服薬で治療します。私の外来では、これまで150例のDAA治療を行いましたが、全例ウィルスを排除できています。DAAそのものの副作用は少ないですが、他のお薬との飲み合わせが悪いものもあり、必ずお薬手帳を持参の上でご相談ください。通常3か月間、(一部の症例は6か月)の内服が必要です。
DAA治療後ですが、通常3年間は3-6か月おきに採血や画像検査でフォローします。特に稀ではありますが、治療後に発癌する症例があり自験例でも経験しています。治療前の線維化進行例、糖尿病合併、高齢者、男性がリスク因子であると考えられています。最先端機器であるFibroScanを使いながら、定期フォローを行っていきます。
当クリニックは、東京都肝臓専門医療機関でもあり、肝炎治療医療費助成を申請し(申請には通常2か月前後かかります)、約5-6万円の費用負担で治療できます。
自己免疫性肝炎
(Autoimmune Hepatitis:AIH)
免疫による慢性炎症で肝細胞が障害される病気です。男女比は1:6で、特に中年以降の女性に多いといわれています。他の免疫疾患が合併することもあり、慢性甲状腺炎(9%程度)、シェーグレン症候群(7%程度)、関節リウマチ(3%程度)が知られています。また、原発性胆汁性胆管炎を合併すること(AIH-PBC overlap症候群)もありますが、頻度は低いです。
自己免疫性肝炎(AIH)の
診断方法・検査
一般の肝機能検査に加えて、抗核抗体や抗平滑筋抗体といった自己抗体が検出され、血清IgG高値がみられます。診断には肝組織所見が重要であるため、可能な限り肝生検を行うべきであると考えられている為、重症化が予測される症例については、近医(東京医療センターなど)に依頼し、肝生検を行うこともあります。当クリニックは、FibroScanを導入している為、LSM(肝硬度や炎症の波及)の状況をみて判断していきます。
自己免疫性肝炎(AIH)の治療
肝障害がみられる場合は、ステロイドを使う必要があり、他の肝疾患と治療が異なる点が重要です。
原発性胆汁性胆管炎
(Primary Biliary Cholangitis:PBC)
肝臓は胆汁という消化液をつくる働きがあります。胆汁は肝臓の中の肝細胞という細胞によってつくられたあと、胆管を通り、いったん胆嚢で蓄えられた後十二指腸に流れこみます。その胆汁の通り道である胆管が壊れる病気です。男女比は約1:4で中年以降の女性に多いといわれています。涙や唾液が出にくくなり、口や眼が乾燥するシェ-グレン症候群(15%程度)、関節リウマチ(5%程度)、慢性甲状腺炎が合併するとされており、これら他の自己免疫疾患の症状が目立つ場合もあります。黄疸やかゆみなどがPBCの症状でみられますが、症状がないことも多いです。
原発性胆汁性胆管炎(PBC)の
診断方法・検査
血中の抗ミトコンドリアM2抗体という自己抗体が検出されることが特徴です。またIgMという免疫抗体も高めに出ます。エコーでの肝形態の評価やFiboScanでの線維化・脂肪化検査も当院では同時に行います。
PBCは最近色々な型があると考えられています。内服薬でコントロール出来る症例がほとんどですが、まれに門脈圧亢進型といわれる食道静脈瘤の発達などが顕著な症例や、黄疸肝不全型と言われる進行性のPBCもあり注意が必要です。(特殊な採血項目である、抗セントロメア抗体や抗gp-210抗体(研究用)で判断します)
原発性胆汁性胆管炎(PBC)の
治療
治療薬としては、ウルソデオキシコ-ル酸という胆汁の流れを促進するお薬や、脂質異常症薬であるフィブラート製剤が使われます。
原発性硬化性胆管炎
(Primary Sclerosing Cholangitis:PSC)
肝臓の中や外の比較的太い胆管が障害され、胆汁の流れが悪くなりうっ滞し、黄疸などが起こる病気です。進行性に胆管狭窄が多発性に起こる事があり、肝機能が悪化していきます。PSCにはしばしば潰瘍性大腸炎、クローン病などの炎症性腸疾患(40%程度)が合併します。
原発性硬化性胆管炎(PSC)の
診断方法・検査
ALPやγーGTPなどの胆道系酵素が上昇しやすく、特徴的な 自己抗体 は存在しないために、画像診断であるERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影)、MRCP(MR胆管膵管撮影)などが診断に有用です。当クリニックでは、疑わしい症例はMRCPを他施設に依頼し検査します。
原発性硬化性胆管炎(PSC)の
治療
ウルソデオキシコ-ル酸での治療となり、内服してても肝機能が進行し、肝不全に陥ってしまうような症例では肝移植を考慮する事もあります。