スルフォラファン

スルフォラファン

はじめに

 カゴメのCMでおなじみかもしれませんが、ファイトケミカルの一種で、ブロッコリーの新芽(スプラウト)などに多く含まれる抗酸化物質です。私は、2013年からこの成分に対する研究に携わり、2015年に成果を論文化し(Kikuchi M, World J Gastroenterol.2015;21(43):12457-67.)、2020年からはカゴメのCMに出演させて頂いています。

スルフォラファンの
脂肪肝に対する効用

 この成分は1974年より研究されており、発がん予防効果から始まり、花粉症予防、ピロリ菌除去、自閉症予防、美肌効果など様々な効用がいわれてきましたが、私が注目したのは、肝機能障害をもつ脂肪肝患者の肝機能改善効果でした。肝機能マーカーであるALTおよびγ-GTPの値を下げる効果があることを報告しました。本研究結果により、カゴメのサプリメントであるスルフォラファンは、"中高年世代の肝臓の健康状態を示す一指標の改善"効果として、機能性表示食品と認定され、パッケージの表面にも提示されています(Kikuchi M, 健康成人の肝機能に対するブロッコリスプラウト抽出物含有サプリメントの有効性検証―多施設無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験―, 薬理と治療 2018;46(1):81-95.)。実臨床においても、最初のステップとして、食事運動療法を指導するうえで、副作用の少ない食品であるSFNは、重要な治療選択です。

 まず、スルフォラファン(以下、SFN)の成分につきお話しします。ブロッコリーの新芽であるブロッコリースプラウトに多く含まれている成分で、1970年代から発癌予防効果があるとして研究されている成分です。新芽とは、人でいう臍帯血のようなもので、栄養素を多く含んでいます。発芽5日目のブロッコリースプラウトで、ブロッコリーの7倍、3日目のブロッコリースーパースプラウトでブロッコリーの20倍といわれています。効用を発揮するには、ブロッコリーでは一株230gを食べる必要があり、ブロッコリースプラウトでは1.5パック、スーパースプラウトでは1パックとなります。テレビで話すと翌日にはスーパーからなくなってますし、毎日購入(冷蔵庫に入れても日持ちしにくい)するのは不可能です。そこで、カゴメからでているサプリメントをお勧めしています。食品であり、薬品ではないので処方箋で出せるわけではなく、インターネットからの購入のみになります。私は、スーパーで購入するブロッコリースプラウトと併用して、サプリメントは2日に1回の服用にしています。通常1日3粒になります。血中に維持しやすい成分で、ビタミン剤のように3食後に分けてのむ必要はないです。小麦アレルギーの方は、内服を控えて下さい。これまでに、大腸がんや乳がんをはじめとする発癌予防効果、抗加齢効果、花粉症予防、自閉症予防、ピロリ菌除去、アルコール2日酔い予防などが報告されていて、海外のセレブの方々は、ごく普通に日常から摂取している食品です。脂肪肝を得意として臨床をしている中で、カゴメから共同研究のお話を頂き、私が脂肪肝や肝機能改善効果を担当しました。2か月の2重盲検試験という、検者にはどちらかがわからない形で2か月試薬を内服してもらい、SFN成分が入っている群と入っていない群を比較するといった、最も信憑性の高い研究方法で行われました。肝機能障害のある方を対象に人で行われた世界で初めての研究で、見事にALT、γ-GTPといった肝機能データが改善しました。偽薬の方は改善なしという結果で統計学的な有意差が証明されました。脂肪肝の指標であるChEや総コレステロールTCも改善がみられ、尿中8-OHDGという酸化ストレスマーカーも改善しました。肝障害がすすみ炎症が及ぶと肝臓はさび付いてきます。SFNはそのさびをそぎ落とし、炎症を抑えて、肝機能を改善する効果があることがわかりました。その後に、私の指揮で健診施設でのデータを集積し、特に中高年の男性に効果が高いことがわかり、機能性表示食品として、パッケージの真ん中に記載されることになりました。確かに、実臨床でも、半年から1年してほとんどの症例で確かな改善が得られています。(M.Kikuchi, 肝疾患症例に対するスルフォラファン長期使用の効果, 第29回日本消化器関連学会週間JDDW 2021.11.5) それ以降は、一部、SFNが効き過ぎるせいかSFNを飲んでいれば大丈夫と、依存性が強い方に、食事運動療法がおろそかになりデータが悪化する例もみられるようになりました。やはり、サプリメント単独では維持するのは不可能で、食事運動療法を前提に上乗せして頂くと、効果が絶大だと思われます。
注目すべきは、アルコールラットでも証明されているアルコール代謝酵素に対する効果(写真や図のキャプシです。SFN半年のョン)内服によってエタノール換算で40g-60g/日以上飲むアルコール性肝障害患者の肝機能を改善しました。その改善率は、アルコール飲まない脂肪肝患者よりも効果が絶大なのには驚きました。私も、飲む前にSFNの内服や、つまみにブロッコリースプラウトを食べて、二日酔い予防につとめています。
 NHKのアサイチに出演後も、肝機能改善効果のあるサプリはSFNが初めてだったこともあり、色々な場面で取り上げて頂き、現在はカゴメのCMに1年前から出演させて頂いています。

スルフォラファンの
睡眠に対する効用

 そんな中、自身も含めSFNを内服した方に、睡眠が良くなった例が多いことに気づきました。脂肪肝と不眠症との関係も深く、SFNで睡眠改善効果が証明されれば、脂肪肝と同時に治療できるという意味合いで、一石二鳥と考え、この新領域に挑戦しました。結果は、アンケートで睡眠の質が向上した方が多く、睡眠ホルモンのメラトニンが21時前後に産生が亢進し、睡眠誘発に寄与していることがわかり,論文化しました(Kikuchi M, J of Functional Foods. 2021;84:1-7.)。また、画期的な発見として、SFNの “メラトニン産生促進剤及び睡眠の質改善剤”としての効用を私が発明者として特許取得することになりました。
まだまだ、魅力と潜在力のあるSFNを、今後も大切にしていきたいと思います。

サプリメントに対する考え方

 サプリと聞いて、ぱっとこない人も多かったことと思います。サプリは医薬品ではなく、健康食品に分類される食品になるので、医薬品のように医師からの処方箋ではありません。サプリと一言でいっても、健康の維持・増進や病気の予防、食事で不足している栄養素の補給や強化、疲労回復、美容やダイエットなど性別や年齢により目的は様々であり、まずは、目的を明確にする必要があります。また、サプリの上手な活用方法は、サプリを利用しながらも生活習慣や食生活も一緒に見直していくことです。毎日の食事から野菜、果物、乳製品、魚などを食品から取り入れるようにして、栄養バランスの良い食事を心がけます。その上で、足りない、もしくは摂取しにくい成分をサプリで補います。サプリに頼りすぎない事が重要です。サプリを購入する際には、成分名、含有量、問い合わせ先を確認します。特に健康面の安全性や有効性を判断するためには含有量が重要です。事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示したサプリもあります。ブロッコリースプラウトに多く含有するスルフォラファンは、中高年世代の肝機能改善効果があるといった、私のデータで、機能性表示しています。このコロナ禍には、巣ごもりの状態になりやすく、脂肪肝を中心としたメタボ予防にスルフォラファンは有用であると考えています。外出制限しながらもご自身の体調を整え、副作用なく健康管理していくという意味で、サプリから体質改善していく姿勢も大事ではないでしょうか。
 コロナ禍の巣ごもりは、活動量の低下により日中の交感神経の働きが衰え、副交感神経を中心とした、“ため込んでしまう”体質に陥りがちです。エネルギー代謝を亢進させ、脂肪を燃焼できる体を作ることが大切です。免疫力の強化や抗疲労効果につながり、将来的なロコモ・フレイル、認知症の予防にも繋がると考えられます。エネルギー産生工場であるミトコンドリア内でのエネルギー産生に不可欠な補酵素としてコエンザイムQ10といった成分があります。還元型コエンザイムQ10であるユビキノールは、そのまま体内に取り込むことが出来、エネルギー代謝を亢進させるのに有用です。運動効率を上げ、抗疲労効果を兼ね備えている点で、スポーツ選手にも注目されているようです。有効な筋肉量の増強や維持には、アミノ酸の中でもロイシンの代謝産物であるHMB(β-hydroxy-β-methylbutyrate)やBCAA含有量の多い、味の素のアミノエールといったサプリをすすめています。一方で、激しい筋肉トレーニング後に摂るプロテインは、過剰投与すると内臓脂肪に変換されてしまうこともあり、注意が必要です。