骨粗しょう症

骨粗しょう症

骨粗鬆症整形外科の先生が中心に骨粗しょう症は治療されるケースが多いですが、骨折する前での予防や疾患管理は内科疾患と考えられます。症状が出ないうちに治療を始められるかが鍵です。
 まず、50歳を境に年齢に応じて骨量は減少します。女性においてはエストロゲンが骨の吸収(骨を溶かし血中のCaを増やす)を抑制する作用がありますので、閉経によりエストロゲンが欠乏すると、骨密度が低下し骨量が減ってきます。こうした加齢による骨粗しょう症は原発性骨粗鬆症といわれます。では、骨粗しょう症は女性だけの病気なのでしょうか。実は、男性は、骨粗しょう症患者の1/4といわれ、男性もかかる病気です。加齢変化に加えて、疾患や薬などが原因となって起こる続発性骨粗鬆症の存在が重要です。続発性骨粗鬆症の原因の中には、骨の強さ(骨強度)を決めるもう一つの要素「骨質」を劣化させるものも含まれます。骨質が劣化してしまうと、骨量(骨密度)がそこまで減少していなくても骨が脆くなって折れやすくなることもあります。続発性骨粗鬆症の原因として、糖尿病、原発性副甲状腺機能亢進症、性腺機能低下症、関節リウマチ、慢性腎臓病(CKD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、ステロイド薬使用などがあります。糖尿病などの生活習慣病が関わる骨変化は、骨質に影響すると考えられています。
 ロコモの予防を考えていく視点で、当クリニックの基本理念は、運動療法の強化、すなわち骨は加齢変化を受けやすい状況である程度の低下はあることが予想されますが、支える筋肉は強化できるはずです。まずは、筋肉の補強は大前提とした上で、骨に対するアプローチを考えていきます。

骨粗しょう症の診断方法

inbody580 まず、InBody結果で骨ミネラル量が基準値より低い症例において、骨粗しょう症の可能性を考えます。この数値は、後述のDXAデータと相関するからです。
 Dual-energy X-ray Absorptiometry(二重エネルギーX線吸収測定:DXA)は今後の導入を検討しており、必要な症例は近医に依頼する形とします。過去に転倒などで骨折の既往がある場合、若い人との比較のパーセント(Young Adult Mean)80%未満の方、ならびに、骨折既往の無い方でも70%未満の方は骨粗しょう症と診断されて、治療の適応となります。
 骨密度は腰椎と大腿骨の2か所で測るのには意義があります。骨は皮質骨と海綿骨に分かれており、骨密度の減少が著しいのは主に海綿骨だといわれています。腰椎は海綿骨を多く含んでいるため、その他の部位で測定を行うよりも骨密度の変化を顕著にとらえる事ができます。一方で、骨粗しょう症の治療の目的は骨折予防です。大腿骨頚部骨折は骨粗しょう症を発症した高齢者に多発し、骨折を契機に寝たきりや閉じこもりになる例が多いことが知られています。そのため皮質骨が多い大腿骨の骨密度を測定することで、加齢による骨折リスクを把握しておく意味合いがあります。
 骨粗しょう症は、骨吸収の促進と骨形成の低下というアンバランスから生じます。骨吸収マーカーして酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ(TRACP-5b)、骨形成マーカーとしてⅠ型プロコラーゲン-N-プロペプチド(P1NP)を採血で調べることができます。

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骨粗しょう症の治療

 治療としては、まず、25(OH)VitD(貯蔵型ビタミンD)を採血で測定し、活性型ビタミンD(エディロールなど)を補充すべきかを判断します(閉経後骨粗しょう症で1回のみ測定可能です)。ビタミンDは腸管からのCa吸収を促進し骨に届け、また他剤と併用する場合も薬の効果に影響します。高Ca血症に注意が必要です。また、単独投与である一定の効果はありますが、大腿骨の骨密度が2-3年後に低下してくる症例もあります。
 では、骨粗しょう症の柱となる薬についてですが、閉経後50-60歳台の女性には、選択的エストロゲン受容体修飾薬(Selective estrogen receptor modulator:SERM)(ビビアントなど)を選択します。骨密度増加は緩徐ですが、当院で合併が多い生活習慣病、特に血清中の総コレステロール(TC)とLDL-Cを低下させる効果もあり有用です。副作用として血栓傾向に注意が必要です。
 70歳以上の方にはビスホスホネート製剤を勧めます。週一回の内服(ボナロンなど)を基本に、月一回の内服、月一回の注射、年一回の注射などがあります。副作用としては、食道炎や胃炎、顎骨壊死、顎骨骨髄炎、腎障害、10年以上の内服で非定型骨折がいわれています。腰椎などの脊椎病変にはボンヒバが有効といった報告もあります。
 圧迫骨折の可能性が低いですが、骨形成も低下している症例はより積極的な治療を必要とします。抗スクレロスチン抗体(イベニティ)を選択し、1年間投与します。この薬剤は、心脳血管障害や高齢者には使えません。低Ca血症にも注意が必要です。その後、抗RANKL抗体(プラリア)に切り換え2-3年骨吸収抑制薬を投与します。この薬剤は低Ca血症になりやすい為デノタスチュアブルというカルシウム、ビタミンD3、マグネシウムの合剤と併用して用い、急に中断することなく、後療法としてビスホスホネート製剤へ繋ぐことが重要です。効果が少なければ、またイベニティに戻して繰り返すといった、骨形成促進薬と骨吸収抑制剤を組み合した逐次療法(正確には、骨吸収抑制剤をベースに骨形成促進剤を効果的に上乗せする方法)の有効性がいわれています。
 一方で、高齢者で、骨折の可能性が高い症例で、骨折の治癒も有効である、抗副甲状腺ホルモン薬(テリボン)という薬剤もあります。週一回の注射ですが、生涯で2年間しか使えないという縛りがあります。
 一方で、蛋白やカルシウム、ビタミンD、ビタミンKを中心とした食事療法も大切です。骨には重力方向からの刺激や振動も大切で、骨を傷めない状況下での筋肉トレーニングを推奨します。