肝機能障害

肝機能障害

肝機能障害 健康診断で肝機能障害がみられた場合は、是非一度当クリニックを受診することをお勧めします。まず、肝機能障害といっても、ALTが高い場合、ASTが高い場合、γ-GTPが高い場合があります。
 ALTが高い場合は、肝細胞障害で血中に逸脱し酵素活性が上昇している可能性を考えます。なぜなら、ALTのほとんどが肝臓に分布しており、腎臓、心筋、骨格筋もありますが僅かである為です。2023年肝臓学会では、奈良宣言といわれるALT値が30を超えた場合医療機関にかかろう、といった啓蒙活動がなされ、徐々にその重要性が認知され始めています。私も、基準値以内でもトランスアミナーゼ(ASTやALT)が30U/lを超えた場合は肝炎があるので積極的に介入していく必要性を提唱しました(M.Kikuchi, 慢性C型肝炎に対する直接作用型抗ウィルス薬(DAA)治療結果からみたトランスアミナーゼ臨床診断値の検証, 第46回日本総合健診医学会,2018.1.26.)。また、大事なのは、AST>ALTが正常ですが、正常範囲内であってもALT>ASTの場合は、何らかの肝臓の炎症があると考えるべきです。
 ASTが高い場合は、肝臓以外にも心臓や骨格筋、腎臓にも分泌しているために注意が必要です。特にALTが正常でASTだけ高いときは、肝臓以外での疾患も疑います。肝疾患でASTがALTよりも上がりやすいものもあり、アルコール性肝障害(アルコール代謝酵素が中心静脈周囲に多い)や薬剤性肝障害(薬物代謝で重要なチトクロームP450が中心静脈周囲に多い)、ショック肝(血圧が下がると中心静脈周囲が虚血になりやすい)などがあり特徴的です。


 γ-GTPはアルコール飲酒の肝障害マーカーと考えられ、AST、ALTに先だってアルコール摂取により上昇し、禁酒により減少、飲酒を再開すると再上昇する点においても、飲酒の良いマーカーと考えられています。但し、20%がpoor responderが存在し、アルコールを飲んでいても全く反応しません。また、アルコール飲まない人でも、筋肉量が少なく基礎代謝が低下している人の中にγ-GTPが高い群があり、初期の酸化ストレスマーカーすなわち、今後低栄養性の肝障害やサルコペニアに移行する可能性が考えられ、フォローが必要と考えています。 
 加齢性変化も重要で、ASTは男女とも加齢により徐々に増加しますが、ALTは男性の成人群で上昇しその後は低下、女性は変動が少ない、と考えられています(M.Kikuchi, 加齢からみた健常人における健診データと肝硬度測定,第17回日本抗加齢医学会,2017.6.4.)。γーGTPは男性は成人群で上昇しその後低下、女性は変動が少ない傾向があり、こうした年齢変化も加味して判断していきます。
 では、当クリニックで、肝機能障害の患者さんが来られたらどのように検査をすすめていくのでしょうか。まず、10分以内に生化学検査の結果が出せるので肝機能の再検査をすすめます。なぜなら、肝機能は感冒などのウィルス感染や薬剤(鎮痛薬や抗生剤が多い)、飲酒などで一時的に上昇するケースも多く、詳細な問診が重要です。そのうえで各種肝炎ウィルスマーカーはじめ、免疫異常による肝障害(自己免疫性肝炎や原発性胆汁性胆管炎など)を採血で鑑別していきます。画像上の問題がないかエコーで検査を行い、占拠性病変や形態異常がないかなどを検索します。そして、当クリニックの特徴でもあるFibroScanで脂肪量や、肝臓の硬さないし炎症の波及を評価します。他の施設で採血や画像が正常であっても、FibroScanを使うことで初期の肝臓変化を捉えることができます。又、肝の代謝異常が疑われる場合は、Inbodyで体全体の体組成を評価し、その人にあった食事や運動療法の指導に繋げていきます。

急性肝炎

ウィルス性、アルコール性、自己免疫性、薬物性など多岐にわたります。中には、重症化、慢性化するものもあるため、注意が必要です。

診断方法・検査

 当クリニックではエコーやFibroScanを駆使して診断に迫っていきます。
採血項目には、以下のようなものが鑑別で考えられ、症例に応じて考慮します。

肝炎ウィルス

B型:HBs抗原、C型:HCV抗体、(経口感染の場合はA型:IgM-HA抗体、E型:IgA-HE抗体)

その他のウィルス

EBウイルス(伝染性単核球症)、サイトメガロウイルス(CMV)、単純ヘルペスウイルス、HIV

アルコール性

問診とIgAの高値やγーGTPなど

自己免疫性

自己免疫性肝炎(AIH):ANAやIgG、原発性胆汁性胆管炎:抗ミトコンドリアM2抗体やIgM

NAFLD

メタボ要素の関与

このように急性肝炎の原因は多岐にわたり、肝障害がみられた場合は、是非一度ご相談ください