過敏性腸症候群

過敏性腸症候群

過敏性腸症候群 腸管事態に異常がないのに腹痛や下痢、便秘や腹部不快感などの症状がみられる。ストレスや内臓知覚過敏、腸管相関の異常などが原因と考えられます。
 腸は第2の脳と言われるように、神経敏感な臓器です。約10億年前に細胞の数がたくさんある生物(多細胞生物)が登場したといわれています。最初のころの多細胞生物は、入口(口)と腸、出口(肛門)というシンプルな構造で、腔腸動物といわれてました。ここから、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類、そして人類が誕生したと考えられ、進化の過程で、腸の背側に脊髄の原型が発達し、その先端が膨らんで体より脳が上方に突出してきたと考えられています。つまり、元々脳は腸管にあったと考えられています。過敏性腸症候群はそうした人類の進化の過程での脳腸相関の破綻が背景にありそうです。
 勤務のある平日は調子が悪く、休日になると改善するようなケース、試験前になると調子が悪くなる場合などがこの病気の可能性を考えます。

過敏性腸症候群の
診断方法・検査

過敏性腸症候群の診断は、2016年に発表されたRomeⅣ基準に従って、過去3カ月間に少なくとも週1回の頻度で腹痛がみられ、かつ以下の基準の2つ以上に該当する場合に診断されます。

  1. 排便に関連した痛みがある。
  2. 痛みが排便回数の変化(便秘または下痢)に連動している。
  3. 痛みが便の硬さの変化に連動している。

 大腸に器質的な疾患がないか、大腸検査で他の病気がないかを除外することも大切です。

大腸カメラ検査

過敏性腸症候群の治療

 まず、ストレスから解放することが大切です。食事としては、人工甘味料のソルビトールを大量に摂取しないようにします。果物やベリー類、一部の植物に含まれるフルクトース(果糖)、乳糖不耐症と同様に乳製品も適度に抑える必要があります。最近ではFODMAPという、小腸で吸収されにくく大腸で発酵しやすい糖質の総称が注目され、その英語の頭文字である、発酵性・オリゴ糖・二糖類・単糖類・糖アルコールの摂取量を1つずつ減らして症状の変化を確認したり、これらの食べものをすべて制限する低FODMAP食を試したりすることで、改善することもあります。また、低脂肪食が助けになることもあり、特になかなか胃が空にならない人や、すぐに空になる人には効果的です。
 内服薬としては、消化管機能改善薬(オピオイド受容体作動薬:セレキノン)やセロトニン5-HT3受容体拮抗薬(イリボー)、高分子重合体ポリカルボフィルカルシウム(コロネル、ポリフル)をはじめ、下痢症状が強ければ整腸剤・止痢剤・抗コリン薬、便秘症状が強ければ消化管運動賦活薬(5-HT4受容体刺激薬:ガスモチン)、粘膜上皮機能変容薬(アミティーザ、リンゼス)や下剤などを併用して使います。また、漢方としては、桂枝加芍薬湯が有効です。
 これは、補足ですが、調音解析技術を活用した自分の腸の音を解析できるアプリ、”腸note"というスマホアプリがあります。過敏性腸症候群の方には特に有効で、ご自身の腸の蠕動状態を確認することで、日常の生活管理に役立っています。サントリーから無償でダウンロードできます。是非ご利用ください。

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