便秘

便秘

便秘 便秘の中で、注意が必要なのは、器質性便秘といわれる腸管狭窄や腫瘤等で形態的な変化を伴う便秘で、こうしたケースでは原因疾患の診断と治療を優先します。それ以外の機能性便秘は、以下のように分類されます。

 

大腸通過正常型

便の量や回数が少ない。食物繊維の多い食事や浸透圧性下剤が推奨。

大腸通過遅延型

原因不明の特発性、パーキンソン病や糖尿病、強皮症、甲状腺機能低下症などの基礎疾患、薬剤性(抗精神薬、抗コリン薬、下剤の乱用)のケースが多い。刺激性下剤推奨。

便排出障害型

骨盤底筋群の低下、いきむ力や直腸の感覚障害が要因。浣腸や坐剤の適応。

 便秘の方は、痔ができたり、直腸に潰瘍ができやすい傾向にあります。腸内細菌のうっ滞と繁殖によってアンモニアが上がる為、肝硬変でアンモニアを代謝ができない患者は特に便秘に注意が必要です。最近では、便秘による腸内細菌の繁殖で脂肪肝が誘発される報告もあり、当クリニックも便秘の対応は重要と認識しています。

便秘の診断方法・検査

 まず、器質的な疾患が疑われるケースでは、大腸内視鏡検査やCT検査を行います。腸管の完全閉塞の場合は、いきなり大腸内視鏡検査を行うと前処置で圧がかかり、腸管が破けてしまうような大事になります。こうしたケースでは、入院の上で検査したり、先にCT検査を行い、安全に大腸鏡検査を行えるかを判断します。 特に盲腸や上行結腸のがんでは、腸の内径が太く、通る便は液状であることより便通の異常が発生しにくいこと、出血が起こっても鮮血ではなく気付きにくいこと、等で早期に発見しにくい点があります。大腸鏡検査の前の事前の問診などでこうしたケースを拾い上げ、安全な検査に努めてまいります。一方で、初診の便潜血陽性などではじめて大腸内視鏡検査でされる方で、下剤内服時に強い腹痛や状態変化がある場合は、下剤内服を続けず、必ず当クリニックへご連絡ください。

大腸内視鏡検査

便秘の治療

 便秘は、4回に1回以上の頻度で

  1. 排便時に強くいきむ
  2. 硬い便が出る
  3. 残便感を感じる
  4. 直腸肛門の閉塞感や排便困難感がある
  5. 便をかき出す(摘便)などの用手的な排便介助が必要および
  6. 便回数が週3回未満

の6項目のうち、2項目を満たした場合に治療対象とされています。(慢性便秘症診療ガイドライン:日本消化器病学会)

 臨床的にみられる便秘のパターンとして

  1. ストレスで大腸が痙攣して便回数が減る体質と
  2. 人によって違う腸の形状が原因で便がひっかかりやすい体質

があります。

(1)のようなケースではストレスの除去、(2)のような場合は、運動や水分励行が効果的です。腸のマッサージや骨盤底筋のトレーニングなどセルフケア出来る部分もあり、自律神経の安定など生活の中から改善することも重要です。
内服薬は下記のように大別されます。

浸透圧性下剤(酸化マグネシウム、モビコール)

浸透圧で腸に水分を運ぶ、高Mg血症(徐脈、嘔気、筋力低下、傾眠など腎障害の方に出やすい)

刺激性下剤 (センノシド、
ピコスルファート)

大腸を刺激して蠕動を促す為、腸が蠕動で腹痛が出やすい。センノシドは耐性・依存性あり。センノシド12㎎はピコスルファート6滴に相当。
大腸に到達してから代謝活性されるので通常6~8時間かかる。

座薬・浣腸(レシカルボン)

腸に炭酸ガスを発生させて直腸内圧をあげてを刺激し蠕動促進、30分後に排便

上皮機能変容薬(アミティーザ)

小腸での水分を増やす。血中濃度が上がりやすく吐き気を起こすこともあり食後に内服

(リンゼス)

小腸の水分を増やす。食事の影響で腸管内圧が上がりやすい為下痢をおこすこともあり食前に内服。
また、内臓神経の抑制作用もある為便秘型の過敏性腸症候群にも効き腹痛も抑える。

胆汁酸トランスポーター阻害薬(グーフィス)

回腸での胆汁の再吸収を阻害し、大腸へ運ばれる胆汁酸を増やし大腸での水分分泌と腸管運動の活性化する。食前に内服。

便を軟らかくして出しやすくする浸透圧性下剤(酸化マグネシウム製剤)や上皮機能変容薬(ルビプロストン、リナクロチド)が最も推奨度が高いエビデンスレベルAになりました」と水上先生は説明します。
 当クリニックでの内服薬の基本は、高齢や腎障害患者を除き、酸化マグネシウムを1g/日(330㎎を1日3回の量)まで投与し、アミティーザやリンゼス、グーフィスのどれかを併用していく。その後、量を調整しやすいピコスルファートや、直腸付近まで便が下りている場合は座薬や浣腸を併用し、センノシドは便秘時に頓用的に使用することを考えています。
 なぜ、以前主流であったセンノシド(プルゼニドやアローゼン)は使われなくなったのか。それは、長期連用による大腸メラノーシスというメラニン色素がついて大腸粘膜が黒ずむ変化が、半年以上連用すると起きると言われています。メラニンは粘膜に留まらず、腸管内の神経叢にも至り、便秘状態をさらに増悪させる可能性があり、大腸メラノーシスを伴う常習性便秘症は、特に強い自覚症状は認めませんが、耐性や依存性があり、下剤を服用しないと排便が困難となります。発がんとの因果関係はありませんが、こうした背景で現在は便秘時にしか使われません。
 最後に食事についての注意を一点。食物繊維は過剰摂取も、便秘・下痢などの便通トラブルの原因になります。 不溶性食物繊維は(芋や大豆、牛蒡など)便のカサを増やし、かつ腸を刺激することで便通を促します。ところが、不溶性食物繊維を摂りすぎるとによって腸内環境が悪化することがあります。 不溶性食物繊維と水溶性食物繊維のバランスも重要なのです。