用賀きくち内科 肝臓・内視鏡クリニック とは

クリニックシンボルマーク
決定への足跡

クリニックシンボルマーク決定への足跡 クリニックのシンボルマークに拘った経緯について記します。
 シンボルマークは象徴であり、そのデザインポリシーをもつことが、クリニックが社会に何を貢献し提供していくかを伝える上で必要不可欠です。ミッション(使命)やパーパス(存在意義)を可視化し、あたため、共に育てていく。患者さんへのメッセージに留まらず、クリニックを訪れる方、そしてそこで働く人達が同じ方向性で目標に向かっていけるよう、その道しるべとなるようなマークを作りたいと考えました。
 まず、私が大切にしたのは信頼です。手を携えて、医療者と患者さんが対等な立場で協力し合う関係。医師としては、今までの経験に加えて、独りよがりにならず、新しいものにも耳を傾けていく謙虚な心が大切です。患者さんに、情報提供して診療に参加して頂くことで、強い絆が生まれます。これからは、患者さんの医療に向き合う力を大切に、共に育むことが重要と考えています。マークにはそんな意味が込められています。
 そして、手の中からは芽が伸び、葉と蝶を描きました。葉は私の専門分野である肝臓をイメージしています。蝶は"腸"にかけていますが、それ以上に大きな意味を持ちます。2023年の12月、私の慶應義塾幼稚舎時代の親友・杉山央君からの勧めで、写真家・蜷川実花さんの展覧会に行く機会がありました。"蝶の舞う景色"という作品には、様々に咲き誇る花びらの中を飛び舞う蝶の姿がありました。Butterfly effectという言葉があるように、蝶は可能性の象徴です。未来、その先に広がる可能性、そうした景色に思いをはせるときに、蝶はより添うように羽ばたく、と蜷川さんは考えておられました。クリニック構想の最中、私は強く感銘を受け、蝶を未来へ飛び立つ可能性として表現しました。
また、腸や肝臓は消化器としての専門分野でありながらも、最も大切にすべきはその根元の根幹の部分で、生活習慣病の根底にある原因をそれぞれの症例で医療者と患者さんが手を取りあって探し、追及していく姿勢を表現しました。
 最後に母校である慶應義塾のシンボルカラーBRB(ブルー・レッド・ブルー)を洋服の袖に入れました。左側の医師が、右側の患者さんの手を包み込む形で手を差し伸べています。当初は、握り合う手をペンマークの色に例え黄色にしていましたが、肌色に近い色に変えました。
 今後は、人々の絆を大切にし、信頼の輪を広げていきたいです。
 最後に、マークの作成に伴い、私の子供達から、そして家族全員からの意見をくみ取り、アイデアをデザインにしてくださった金原かの先生にこの場を借りて、御礼申し上げます。

医院の理念

メタボとロコモを同時に
考えることの重要性

 内科クリニックでは、糖尿病、脂質異常症、高血圧といった動脈硬化の要因につき、治療していくメタボ管理がメインであるクリニックが多いと思います。当クリニックは、私が脂肪肝の専門であることもあり、そこから脂肪肝の評価と管理、逆に脂肪肝から生活習慣病の管理を行い、よりグローバルな診療を目指しています。でも実はこれだけでは、健康・未病管理としては不十分です。
 ロコモティブ症候群は、運動器障害により移動機能が低下した状態を指します。整形外科領域で提唱され、こうした現象が、寝たきり、そして、老年学会が提唱する“フレイル”、つまり心身の脆弱な状態に陥ってきます。コロナ禍で自身の体力の衰えを感じている方も多いのではないでしょうか。年齢を重ねてくると、メタボ管理以上に大切になるのはロコモの予防です。いくら、生活習慣病の管理で高血圧、脂質異常症、糖尿病の治療を行っていても、体が弱くなり、基礎代謝が落ちてしまい、結果寝たきりになってしまっては仕方がない訳です。それが私の大切にしている、今日のメタボ、明日のロコモのスライド(下)なのです。

メタボとロコモ

ロコモは内科医が
予防すべきである

 ロコモもフレイルも整形外科、老年科から出た概念であり、では内科医としては何をすべきなのか。ロコモ、フレイルの予防管理こそが内科医がすべき役目ではないでしょうか。メタボとロコモは表裏一体であり、内科医がメタボの管理と同期にロコモの評価を行い、将来的なフレイル予防につなげていくことが何よりも重要です。まさに、当クリニックが目指す、グローバル診療の根幹の部分です。
 では、どの段階で、ロコモの介入をすべきか。健常人さえも、50-60歳からは、筋力や骨代謝は落ちはじめます。メタボ症例においては、40-50才台から意識する必要があると思います。筋肉強化や基礎代謝を上げるとこで、自然とメタボも改善する症例も多くみられます。特に、そうした、生活リズムや体の内側から治すことが何よりも自然に近い形で、効果的なのです。

究極の脂肪肝診療、
生活習慣病指導

 当クリニックでは、20年間脂肪肝や生活習慣病を診てきた経験を十分に生かして、独自の診療スタイルを提供いたします。
 まず、大事なことは、“沈黙の臓器・肝臓”とどう向き合うかです。そこでクリニックで採血結果が迅速に出せる方法がないかと、検討を重ねた結果、ドライケムという迅速分析装置に出会いました。なんと約10分で肝機能を含む生化学を調べることが可能となり、早速当クリニックに導入しました。元来ある血算、CRP、HbA1c測定装置と合わせて、脂肪肝やメタボを管理する上で必要な項目を瞬時に測定できるようになりました。次に、私の診療の右腕とまでいうべく、肝臓の脂肪化や硬度が数値で測れるFibroScanの設置を行いました。日本のクリニックで10台目になりますが、高精度の脂肪量測定機能を搭載しているものは、クリニックでここだけです。私が慶應義塾大学病院にいた頃、第一台目がフランスから日本にはじめて導入されてから、東海大学・東京医療センター時代を含め、留学2年間を除いたとしても20年間、この機器と一心同体で歩んで参りました。当クリニックの特徴として、FibroScanを診察室内に設置し、他施設では技師などが測定している中、私自身の測定で得た肝臓の情報を診療に役立てフィードバックしている点にあります。FibroScanからの情報は、採血データからではわからない情報が得られることも多く、診療に役立つと同時に、自らの研鑽にも繋がり、脂肪肝診療には切っても切り離せない存在です。そして、前医でも繰り返し行ってきた肝臓病教室の再開を決めました。これは、患者さん側からの再開を望む強い意向で後押しされる形で“脂肪肝のすすめ、ようが健幸教室”と名前を変え、開催することにしました。通常の診療内では話すことが困難な、食事・運動療法を中心とした生活留意点や診療情報、データの読み方などをわかりやすく解説して参ります。クリニックの待合室を利用して行い、ZOOMとのハイブリッド配信を行います。教室での内容は、受付横に二次元バーコードを設置し、診察の待合時間などに後から見れるように致します。
 脂肪肝患者で見られる変化として、全身性に動脈硬化がすすみ、将来的な心筋梗塞や脳梗塞の発症が問題視されています。消化器内科医である以前に内科医であることをもう一度我に返り、脂肪肝患者の動脈硬化病変の評価に着目することにしました。毎年、頸動脈エコーやCAVI(cardio-ankle vascular index)で動脈硬化を評価し、採血でも動脈硬化評価指標であるRLP-C(レムナントリポ蛋白コレステロール)を測定して判断します。また、体成分組成計であるInBodyを導入し、生体インピーダンス法を用いて、全身的な筋肉量や体脂肪量、そして部位別の変化を調べ、食事運動療法の指導に生かしてまいります。
 ここからは、クリニックの革新的な挑戦になりますが、常日頃私が気にしている事柄に、ロコモティブシンドローム(運動器症候群、以下ロコモ)があります。日本整形外科学会が提唱した概念であり、年齢を重ねることで、筋力が低下し、関節や脊椎などの病気を発症して運動器機能が低下し、立ったり、歩いたりといった移動機能が低下した状態を指します。メタボを管理しすぎるあまり、基礎代謝が落ちてしまい、必要な筋肉量が落ち、ロコモが進行してしまう、そんな臨床上のジレンマを経験します。メタボとロコモは同時管理すべきであるというのが私の考えです。ロコモになった状況においては整形外科の先生に診てもらわなければならない面が多いですが、その予防に関しては食事運動がかかわる部分も多く、内科医がすべきであると考えます。当クリニックでは、上記InBody測定に加えて、握力や身長の測定やアンケートによる“ロコモチェック”を行い積極的に運動療法に繋げていきます。握力測定の重要性は既に報告しています(M.Kikuchi, 肝疾患診療における定量値としての握力測定の重要性, 第105回日本消化器病学会総会 2019.5.9.) が、骨粗しょう症の早期介入やロコモの悪化に気づく手段として当院では身長測定を重要視します。メタボとロコモを同時診療できる、日本初のクリニックを目指していきます。
 一方で、脂肪肝の原因の一つにアルコール多飲があります。私が慶應義塾消化器内科のアルコール研究グループに所属し多くのアルコール患者さんの診療に携わっていたこともあり、引き続き多くの患者さんが私の外来にいらしています。問題飲酒をするようになると、消化器内科医一人では抱えきれなくなることを病院勤務時代から心底経験しています。元職の東京医療センターでは、精神科医やソーシャルワーカー、看護師など10職種から成る多職種チームをつくり、精神科病棟に入院して禁酒指導するリハビリテーションプログラムTAPPY(東京医療センターアルコールリハビリテーションプログラム)を立ち上げました(M.Kikuchi,アルコール使用障害・依存症に立ち向かう多職種チーム医療:アルコール短期入院プログラムの発足,第55回日本肝臓学会総会, ワークショップ,2019.5.31.)。昨今では、節酒薬がつかえるようになり節酒概念が確立されると、クリニックが果たさねばならない役割も多くなることが予想されます。当クリニックでは、アルコール使用障害が疑われる症例に、AUDIT (Alcohol Use Disorders Identification Test)を用い、軽症例は飲酒日記の配布とYoutube動画などを利用し節酒指導、治療を積極的に行っています。重度依存例はTAPPYや久里浜アルコール症センターへの紹介を行い、クリニックで管理出来うる症例については可能な限りアルコール患者さんのお手伝いをしていきます。
 脂肪肝症例の原因や併発症は多岐にわたり多角的な診療アプローチを必要とします。小回りの利くクリニックでの特性を十分に生かしつつ、他施設と連携をとり、多面的な包括的観点から診療体制を充実させ、究極の脂肪肝診療、生活習慣病指導に繋げられるように今後とも日々精進して参ります。宜しくお願い致します。

クリニックで展開する
二刀流診療

コロナによる脂肪肝への影響

 まず、コロナが長期化する中、消化器内科外来通院中の患者において脂肪肝がどのように変化しているかを調べました。FibroScanという肝脂肪量測定器を用いて、コロナ前後で比較したところCAP(controlled attenuation parameter :肝脂肪量)の増悪がみられました(M.Kikuchi, 長期化するコロナ禍でみた二次健康被害~増悪する脂肪肝を中心に, 第50回日本総合健診医学会, シンポジウム, 2022.1.28.) 。その後の経時的な変化をみても、肝予備能の低下、肝硬度の上昇を認め、脂肪肝病態において炎症や肝線維化の進行、肝予備能の悪化がみられることを報告しました(M.Kikuchi, コロナ禍で重要視される、クリニックで展開する脂肪肝診療, 第108回日本消化器病学会総会, 2022.4.21.) 。今後のMASH(代謝異常関連脂肪性肝炎)への伸展や肝硬変・肝癌の発症、心・血管イベントの発症を留意する必要があります。
 コロナ禍でのがん検出の遅延や重症例の増加ばかりフォーカスされていますが、脂肪肝にみられるこうした現象は、メタボリック症候群(メタボ)の肝臓での表現型であることからも、メタボ全体の増悪が今後心配されます。

コロナ禍での脂肪肝

健診で軽視され続ける脂肪肝

脂肪肝が軽視されており、生活習慣の改善につながっていないケースが多くみられます。肝臓に脂肪がつくという病態は、肝臓自体の炎症や肝硬変、肝がんに進まないないように管理することは当然のことながら、それ以上に、全身的に代謝異常が起きてることになります。血液中の油が過剰になっていたり、つかなくてもいい場所に脂肪がついていたり、血管がドロドロであったり・・。つまり、脂肪肝を指摘されたということは、全身で代謝システムが故障している危険信号の一つです。未病予防の観点からも初期の脂肪肝を捉えることは重要なのです。

一般保険診療と
健診予防医学の違い

 一般診療をしている中で、患者さんからよく質問される事項として、例えば、頭が気になるから頭部の画像検査をしてほしいとか、知人に膵臓がんの人がいるから検査してほしいと相談を受けるケースがあります。日本の医療は国民皆保険で全ての国民が全国のどの病院にもフリーアクセスでき、比較的安価に高度な医療を受けられるという点で世界屈指の制度であります。診察後の実質負担額は1割から3割に限り、その多くを保険料や公費で賄っている現状もあり、高齢化に伴う医療費の増大は社会問題でもあります。一般保険診療は、病名を明記した上で、その病気にフォーカスを当て、必要な検査や治療が保険適応内のものにつき認められています。前述したケースなどを全て疑い病名をつけて保険診療にしたらどうなるでしょうか。日本の医療経済が破綻してしまいます。そこで、全身をモニターして、スクリーニング検査から健康異常を早期発見し健康を保持する視点として、健診予防医学があります。健保組合や行政が一部ないし全額負担するケースもありますが、こちらは保険がきかない検査となります。よって、結果も“〇〇リスクが高い”とか“〇〇の疑いがある”といった傾向を示す表現が多く、必ず2次検査や診療に繋げるように書かれています。簡便な検査(検査法においても、医療経済的視点においても)で陽性者をふるいにかけ、精密検査に繋げることが重要です。わかりやすい例が、大腸の便潜血反応がそうです。陽性の場合は内視鏡検査で精密検査を行います。こうした2次検査は保険病名に基づく一般診療になる訳です。このような仕組みをよく理解していないと、医療を受診する側も提供する側も適切な診療に繋がらなくなってしまいます。

健診と検診の違い、人間ドック

同じケンシンでも、意味が全然違います。健診は健康診断の略語で、健康が保たれているかを調べる一次予防(病気にならないようにする)の観点。会社で行う定期健診や、特定健診が主のものです。検診はがん検診(胃がん、大腸がん、肺がん、子宮がん、乳がん等:右記)や、歯科検診など、特定の臓器を検査することを目的とした二次予防(病気を早期発見、治療する)の検査です。ちなみに、人間ドックは身体各部位の検査を受けて、臓器の異常や病気の有無を調べる健康診断で0次予防と考えられています。胃がん検診による胃カメラ検査の盲点についてお話しします。胃がんの二次予防を目的としているため、原則胃に病気がない方が対象になります。がんを疑う以外の生検は控え、基本食道がんや十二指腸がんの精密診断は認められていません。細かく言うと理論上はこうした規約ですが、熟練した内視鏡技術をもつ医師が施行する施設では最大限検査から診断に繋げてくれると思います。

対策型がん検診の内容
種類 検査項目 対象者 受診間隔
胃がん検診 問診に加え、胃部エックス線検査又は胃内視鏡検査のいずれか 50歳以上 2年に1回
子宮頸がん検診 問診、視診、子宮頸部の細胞診及び内診 20歳以上 2年に1回
肺がん検診 質問(問診)、胸部エックス線検査及び喀痰細胞診 40歳以上 年に1回
乳がん検診 問診及び、乳房エックス線検査(マンモグラフィ) 40歳以上 2年に1回
大腸がん検診 問診および便潜血検査 40歳以上 年に1回
胃がん検診と一般保険診療
  胃がん検診 一般保険診療
目的 胃がんでなくなる患者を減らす。

病気の有無や原因を調べる、がんについては早期発見を目標とする。

対象者 50歳以上で、原則、病気のない方 病気や病気を疑う人(健康な人には行わない)
対象となる病気 胃がん(食道がんでなはい)
食道がんが疑われた場合、後日保険診療で内視鏡をしなおす必要性

内視鏡がとどく範囲の全ての病気

生検 10%以下に抑えるように目標設定 微小ながんについても生検
鎮静 行わない、行う場合は自費負担 必要に応じて保険内で行う
ピロリ菌診療 対象外 必要に応じて行う
検査期間 2年に1回 間隔は必要に応じて決定

健診と一般診療の問題点

 まず、健診分野での問題点をあげます。①受診しただけで二次検査に繋がっていない点。これには様々な要因が考えられます。健診分野では、病名が申告されていないことが、受診者が問題ない、という認識に勝手に解釈してしまうことがあります。"リスクが高い"や"疑いがある"といった健診特有の表現を過小評価してしまう傾向があります。健診施設側にも問題があり、合理性や効率性を重視するばかりに、結果の通知が不十分であったり、超音波結果などではサイズの記載がされておらず二次検査の時に困るケースもあります。また、検査項目がマンネリ化しており、年齢や性別、個々の危険因子が考慮されておらず、毎年漫然と同じ検査が繰り返されています。特に、図1に示すように、喫煙者・飲酒者には癌リスクの観点からも、超音波や胃カメラで検出できる項目が多く、リスクに応じて積極的にこうした検査を推奨すべきです。②会社からの健診では毎年されていたものの、退職された時点で、会社からの補助がなくなり健診をやめてしまう方が多くみられます。組合からの金銭的補助の部分が大きいですが、健診受診時により能動的な姿勢があれば、がんリスクが高まる退職後60歳や70歳代においても、引き続き検査をうける姿勢に繋がる様に思います。
 では、二次検査を受け入れる側はどうでしょうか。まず患者心理として、大学病院や総合病院に受診するケースが多い印象です。①特に大学病院や総合病院で重病や難治症例、発熱外来などを診察している中で、健診異常の患者を十分に対応できていない状況があります。特に慢性疾患の症例は後回しにされやすい傾向にあります。②現時点で問題ないとしても、3か月後や半年後とフォローしていくうちに病気が見つかるケースもある中、こうしたフォロー体制が不十分な施設が多いのが現状です。
 こうした背景を踏まえると当クリニックが果たす役割は大きいと考えます。健診異常から一般診療を繋ぐかけ橋となり、同時にその両者の狭間を突き進み、弱点を補っていくフットワークの良いクリニックが求められています。これこそが、当院が掲げる、健診と一般診療の"二刀流"診療を意味します。

がんのリスク因子と必要な検査項目

理想の診療体制とは

 まず、人口ピラミッドを眺めると、団塊世代が高齢化し団塊世代ジュニアが働き盛りの年代にあり、団塊世代ジュニアが高齢化してくると少子化がより深刻化し、現状の医療体制では維持できなくなります。そこで、壮年期での予防医療の重要性が高まると考えています。特に強調したいのは、メタボ診療にフォーカスが当たりすぎていてロコモティブ症候群(ロコモ)の予防や管理が疎かになっていないか。表裏一体で意識(図2)し、壮年期での基礎代謝を上げるための運動療法、筋力トレーニングを行うことが、メタボとロコモの両サイドからみても重要です。

今日のメタボ 明日のロコモ

 では、どのようにクリニックで二刀流診療を実現していくのか。まず、区の特定健診の項目を重視した上で、リスクの高い人に追加オプションをすすめていきます。特に問診項目からの情報は重要であり、喫煙や飲酒歴の方は、積極的に内視鏡や超音波検査に繋げることが肝心です。70歳以上では、毎年の健診受診を徹底していただきたいです。そして最も大事なことは健診での結果を適切に拾い上げ、一般診療に繋げることです。内科の立場からは、専門性の高い婦人科や泌尿器科の病気や検査などは他院へ紹介依頼していきます。さらに一般診療を肥大化させないように、マンネリ化したルーチン処方から脱却し、患者さんの健康意識や精神的自立がはかれるように導くことが重要です。時間外で食事運動療法の講義をしたり、ヨガ教室や節酒教室をしたり、患者目線で健康教育を行い、健康意識を向上させることで、一般診療のスマート化をはかることが大切です。結果、一般診療から健診に再シフトし健診でのフォローのみで済む方が増えてことが何よりも理想の診療体制です。(図3)

理想のクリニック診療

 コロナを経験して、がんの発見のみならず、慢性疾患の診療が後回しになり、今後の疾患増悪が懸念されています。健診受診への啓蒙、そして健診から的確に一般診療に繋げ、患者の自浄効果を医療がサポートする形で医療のスマート化を図ることが出来たら、何よりも理想の診療体系を構築できます。今後は、健診センターや総合病院の弱点を補いつつ、その両者の狭間を突き進む、フットワークのよいクリニック診療が求められており、その先導者として当クリニックの果たす役割は大きいと考えています。

(上記内容は、第51回日本総合健診医学会 2023年1月27日 シンポジウム1 総合健診への提言~臨床の現場から考えたこと で発表し、総合健診 2023;50(6):592-594に論文化しました。)