血便、便潜血陽性

血便、便潜血陽性

血便 便に混ざる血液は、出血してからの時間により、赤から黒色調に変化し、胃酸の影響を受けると黒色に変化します。 つまり、鮮やかな赤に近いほど出血点は肛門に近く(肛門周囲、痔や大腸)、黒っぽいほど肛門から遠く、胃に近い(胃、十二指腸、上部小腸)可能性が高いことになります。中でもタール便と言われる、コールタール様に黒く輝く便がでるのは、出血した血液が小腸、大腸を通り抜ける間にヘモグロビンの中の鉄が酸化され、黒色の酸化鉄になり、これが便に混じることで墨のような黒になるのです。では、便秘になると、黒っぽくなるのはなぜでしょうか。それは、腸内に長く留まった便が、腸内にいる悪玉菌の活動によって腐敗します。長く腐敗しつづけると、腸内環境全体が乱れ、善玉菌が減っていきます。善玉菌は、乳酸や酪酸などの酸を作りますが、それらの酸が不足していくことで腸内全体がアルカリ性に傾きます。このアルカリ性に傾いた状態の腸で作られた便は、色が黒っぽくなるのです。このように、便の色で出血部位を見極めるのが重要で、可能であれば、スマホなどで写真を撮り、記録されることをお勧めします。
 上記タール便のケース、血圧が低い時、心拍数が100以上、呼吸が早い、顔色が悪い、意識がおかしい、明らかに出血量が多いといった場合、緊急性が高い為救急車を要請し、入院出来る設備への搬送が必要です。
 ちなみに、便が白い場合は、閉塞性黄疸や肝不全などの肝疾患、ロタウイルス感染症、バリウム検査後の状態を考えます。

血便、便潜血陽性の
鑑別診断・分類

便潜血検査 便潜血が陽性になる原因は様々ですが、大腸がんや大腸ポリープなどの腫瘍性疾患、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患、大腸憩室炎などの大腸炎、痔などの肛門疾患が考えられます。潜血とは潜む血と書くように、実際大腸カメラでみても何もないケースや、一時的な肛門付近の出血を陽性と拾い上げるケースもあります。炎症性腸疾患患者は、日常から少量の微出血が起こっている場合が多く、便潜血反応は陽性になりやすい為、健診項目で含まれている場合は炎症性腸疾患の治療中であることを伝えると検査を除外するケースがほとんどです。

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診断方法・検査

 便潜血陽性や血便がみられた場合は、まず大腸カメラ検査をお勧めします。当院では、適量の鎮静剤と鎮痛剤の使用や、検査後の腹部の張りを抑える炭酸ガス送気装置の使用などにより、苦痛の少ない大腸カメラ検査を実施しています。過度に不安にならずに、お気軽にご相談ください。また、外来で検査難しいケース(自宅が遠方で来院までの交通機関で下剤が心配、大きなポリープがあるケース、抗凝固剤内服中で基礎疾患の管理上休薬出来ずに内視鏡処置をするケース、緊急処置が必要な出血例など)は、院長の前勤務先である東京医療センターや旗の台病院と連携を取り、患者さんの状態にあった治療ができるように努めます。下剤の内服や高齢による検査困難例は近医でのCT検査を依頼しますが、この場合は命に係わる進行性の大腸がんは検出できても、初期の大腸がんや大腸ポリープまでは検出できない大腸粗大病変の検査であることをご理解頂き、検査をお願いしています。
 最後に便潜血検査についてお話します。便潜血検査は、大腸がんのスクリーニングに用いられる検査で、死亡リスクを76~81%程度低下させると報告されています。感度とは、大腸がんがある場合に便潜血検査が陽性となる確率であり、特異度とは、大腸がんがない場合に便潜血検査が陰性となる確率です。便潜血検査の感度は30-92.9%で特異度は88-97.6%と言われています。では、なせ2日必要なのでしょうか。大腸早期がん検出感度が1日法より2日法の方が高いと報告されています。(2日法61.3%>1日法41.4%)逆に3日法は2日法とそれほどは感度は変わらず、特異度が低下するため、その欠点の方が大きいとされています。つまり、早期大腸がんの場合、必ずしもずっと出血していない事があり、2日検査することで どちらかが陽性として引っかけてくれることがあるということです。逆にいうと、一日でも陽性に出た場合は、再度便潜血検査を施行することは意味がなく、大腸カメラなどの2次検査に移行するべきと考えます。

大腸カメラ検査