γ-GTPでお困りの方 隠された奥義
γ-GTPとは、ガンマグルタミルトランスペプチダーゼの略で、よく飲酒マーカーとして認識されています。アルコール量と相関する場合が多く、患者さんの飲酒量を把握するのに一助となります。診察の直前まで飲んでいれば高くなりますし、診察に向けて自粛されていれば下がってきます。患者さんの飲酒行動やモチベーションを知る上でも重要です。20%ぐらいにpoor responderといって、γ-GTPが全くアルコールの指標にならない方もいるので要注意です。
さて、アルコールを飲まない脂肪肝の方で、γ-GTPが高い症例がある事が知られています。γ-GTPは肝臓、腎臓、肺、膵臓、血管内皮など多くの臓器に存在しており、特に腎臓には多く、肝臓の5倍以上存在していますが、腎臓のγ-GTPは尿に排泄されるので、血液中のγ-GTP高値は、一般的に肝細胞や胆管細胞由来と考えられています。では、非アルコールで脂肪肝の方が、γ-GTPが高くなる原因は、肝・胆管系の障害なのでしょうか?確かにAST、ALTなど肝機能障害をきたしている脂肪肝症例ではこうした説明がつきますが、γ-GTPだけが高い例や、さらに脂肪肝もないのにγ-GTPだけが高い症例を多く経験すると、これだけで説明できないことに気づきます。
γ-GTPは、細胞内の抗酸化物質であるグルタチオンをアミノ酸に分解するための唯一の酵素です。細胞内で再合成されたグルタチオンは、酸化ストレスを緩和したり、有害物質の除去の役割を果たします。したがって、γ-GTPは間接的に抗酸化ストレスに重要な役割をもっており、肝臓内で発生した活性酸素などの除去の役割をしています。活性酸素が溜まると肝臓の細胞がダメージを受けてしますので、少しでもダメージを減らそうγ-GTPが上がる訳です。γ-GTPが”初期の酸化ストレスマーカー”であると言われる所以です。
では、こうした細胞レベルの話を臨床データで説明できないかと考えだしたのが、今のクリニックで行っているInBodyエコシステムとFibroScanの統合です。小生がこうした症例は基礎代謝に関係してるのではと考え、体組成を測れるInbodyと筋肉の質をみる握力計、そして肝脂肪量をみるFibroScanを日本で初めて統合するシステムを当クリニックで導入しました。
結果は仮説通りで、基礎代謝量が低く、体幹部の筋肉量や質が悪い症例でγ-GTPが高いことが証明されました。当院のデータとして近日中に学会で発表予定です。
γ-GTPの奥の深さに脱帽です。本当臨床は奥深く、勉強になります。