年末を前に アルコール飲酒を採血データで見抜く
年末に飲酒機会も多くなることが予想されます。そこで飲酒データの見方について解説しておきます。
まず、冒頭で伝えする内容は、飲酒量の把握についてです。昨今のアルコール類の多様化で、エタノール量(アルコール度数×量×比重0.8で計算)を掴むのが困難です。以前の飲酒量や代謝酵素の強さなどを加えながら、適切な飲酒量をつかむようにしています。当院では非常に細かく飲酒量やアルコールの種類まで聞くのはそのためです。さらに、多飲者は、アルコール量を過少申告する傾向にあることもわかっている為、慎重な問診が重要です。
採血データで重要なのは、γ-GTPが80%の人でアルコール量と相関する飲酒マーカーになり(20%ではならないことも大切)、肝機能データの中でもGOTが高くなる点があります。他の肝疾患ではGPTが優位に高値になる一方で、アルコールはGOTが高いのが特徴です。これはアルコールを代謝する酵素が肝臓の中心静脈周囲に多いからと考えられています。
肝機能マーカー以外にも、MCV(Mean corpsular volume)が高くなります。これは、赤血球の形状が大きくなることがいわれていて、赤血球を構成する膜脂質のターンオーバーをアルコールが阻害している為血球が大きくなると考えられています。また、善玉コレステロールであるHDL-Cが高値になることが有名です。これは、コレステリルエステル転送蛋白(CETP) 活性が低下するためで、決して体によいHDL-Cだけをカウントしている訳ではなく、機能が不十分なHDL-Cも増えている可能性が考えられており体に有益ではありません。他、IgAが高くなったり、腫瘍マーカーのPIVKA-Ⅱが高値になります(ビタミンK摂取障害のため)。
当院の武器であるFibroScanではLSM(肝硬度)が高値で検出する為、すぐに診察の何日前まで飲酒があったのかも予測できます。
最先端機器とデータで、患者さんのアルコール飲酒状態を正確に把握できるようになっております。心配な時はいつでもお声掛けください。