急性胃腸炎

急性胃腸炎

細菌、ウイルス、原虫などの微生物の経口感染によって起こり、下痢や悪心・嘔吐、時に腹痛・発熱などの症状をきたす疾患をさします。
ウイルス感染によるものが多く,通常は短期間で自然治癒します。

急性胃腸炎の診断方法・検査

 上記症状を示し、病原微生物を絞り込むには、問診が重要です。(図)
 当クリニックでは採血で炎症反応の程度をみると同時に、白血球の内訳(分画といいます)まで即時に分かるので、ウィルス性か細菌性かの予測が出来、電解質異常などもわかります。
 又、通常、エコー検査は、実質臓器(おなかの中で塊の臓器:肝臓、胆のう、腎臓など)の描出を得意として、管腔臓器(胃や大腸など)は苦手としています。なぜなら、小腸壁は4mm以下、大腸壁では3mm以下が正常で、正常な消化管はガスや便のため、はっきり見えずわかりにくいからです。ただその中で、壁の肥厚がみられた場合は、腸管の炎症や腫瘤性病変と考え所見として考慮していきます。特に腸管への炎症の波及は、細菌性(抗生剤の治療適応がある)の場合に腸管の壁肥厚が出やすく、ウィルス性はあまりはっきりしません。
 また、感染力が強いとされるノロウィルスについては、糞便検査となり、検査キットで診断しますが、3歳未満、65歳以上の方のみが保険適応となり、それ以外の方は自費診療になります。これには意味があり、迅速キットで結果が早く出る半面、ノロウイルスに感染していても陽性とならない場合もあり、ノロウイルスに感染していないことを確かめることができないからです。その他の細菌についしても、便培養検査がありますが、便培養の陽性率は5%程度であり、数日間を要します。軽症であれば、結果が出る間に治ってしまうケースが多く、重症化が予想されない限り便培養検査は行う必要はありません。

急性胃腸炎の治療

 脱水にならないように水分補給や、症状が強い場合は点滴を行います。ウイルス感染の場合は、整腸剤や吐き気止めなどの薬による対症療法を行います。 また、細菌感染の場合は、抗生剤の内服や点滴を行います。
 感染した方の吐瀉物や便は周囲に飛び散らないように注意をし、必ず石鹸を使って丁寧に手洗いをしましょう。処理する際は、使い捨ての手袋やマスク、エプロンなどを使用し、手を拭く時もペーパータオルなどを使用すると安心です。
 下痢症状は治まった後も、便の中にはウイルスが残っています。トイレの後の手洗いは念入りに行いましょう。強い感染力のあるノロウイルスやロタウイルスなどは、石鹸やアルコール消毒では生き残ってしまう可能性があり注意が必要です。

感染性胃腸炎

  病原微生物 感染源 潜伏期 血便 症状 備考
細菌 カンピロバクター 2-10日 ++ 下痢、高熱、腹痛 乳幼児集団発生 ギランバレー
サルモネラ 鶏肉、鶏卵 0.5-2日 下痢、高熱、腹痛 多彩な症状
病原性大腸菌   1-5日 下痢、高熱、腹痛 べロ毒素→腸管出血性
エルシニア 豚肉、水 3-7日 発熱、腹痛 右下腹部
腸炎ビブリオ 魚介 0.5-1日 下痢、高熱、腹痛、嘔吐 夏、腹痛
黄色ブドウ球菌 弁当、手 0.5日 嘔吐 耐熱性腸管毒素
ウェルシュ菌 スープ類 0.5-1日 下痢、腹痛 再加熱
ノロウィルス カキ、貝 0.5-2日 下痢、腹痛、嘔吐 秋から冬 感染力強い
ウィルス ロタ、アデノウィルス 糞便 3-5日 下痢、腹痛、嘔吐 乳幼児に多い
寄生虫 赤痢アメーバ 性感染 14日 ++ 下痢 渡航歴、肝膿瘍