食の単一化による生活習慣病の発症を考える
NHKヒューマンエイジで人間の食の欲望についての放送がありました。第二次世界大戦の戦場への食糧補給から始まり、食料生産性の向上や安定した食糧需給を獲得するのに、小麦の大量生産が始まりました。その後、品種改良を重ね、レトルトや冷凍食品などへの応用で生活の利便性があがり、さらには難民の栄養状態を改善する為にも利用されるようになりました。しかし小麦に偏った食の単一化は、小麦に含まれるでんぷんがお米などに含まれるブドウ糖よりも血糖値を急激させるために糖質過剰な状態を作り、食物繊維の摂取が減ることで生活習慣病のリスクも高まっていきます。世界でも子供の肥満が増え、将来の糖尿病発症が問題になっています。小麦の中の含まれているグルテンは、腸内環境の悪化にも影響し依存性があるとも考えられています。人間の食への欲求が深まり、最近では世界の国土の3割が農地に置き換わり、他の生物の生態系への影響や環境問題にもつながっています。
簡便にスーパーの弁当やファーストフードで済ますような生活に大きな落とし穴があります。医学の世界でも、”温故知新”という言葉があるように1980-90年代の基礎研究の論文に立ち返ることで病態生理が解明されることが多く、私も20世紀の論文を大切にしていますが、食事も自分の幼少期の事を振り返り、問題点を見つけることも大切です。
当クリニックも、食事について見直し、加工品に偏らない、自然を大切にした栄養素の高い食の追及を行い、正確な情報を伝えていこうと考えています。日本食文化会議の理事である佐藤容紹君は私の小学校の同級生であり、彼とのキャンプや田植えなどの自然体験を通して、彼の日本人が大切にすべき日本食の価値を学ばせてもらいました。今後も、生活習慣病の方々に、どんな質の高い食を提供できるか、追及していきたいと考えています。